帯より
なぜ、そこまでやるのか?
家庭も人生もすべてを投げうち、禁じられたドーピングをしてまでスポンサーリンク
読み始めて数分で没頭してました。
こんな小説があったとは!
これこそ活字で見るボディビルです。
ボディビルダー達の苦悩と葛藤、その存在の内面に迫った1冊です。
本の構成は、
プロローグ
第1章 コンテスト
第2章 女性ビルダー
第3章 禁止薬物
第4章 生涯をかけて
となっています。
それぞれの章から、読書メモを書いておきます。
プロローグ
・ボディビルダーが必ずしも”健全”な肉体と精神の持ち主というわけでもない。
彼らはどれだけ肥大した筋肉を手に入れても満足せず、それどころか筋肉が巨大化するほどに欲求を募らせる。彼らの渇望には果てがない。・もっと、もっと、もっと・・・彼らの生きざまは、足ることを知らない。ーだが充足してしまった時点で、ボディビルという行為は終わってしまうのだ。
第1章 コンテスト
この章の主役は、ボディビルダーの谷野義弘さんです。
大怪我されたのに、復活してまだ現役で活躍されています。
この人を動画で初めてみた時、その筋肉の切れ味に驚きました。
現日本チャンピオンの鈴木雅さんの奥さんである水間詩子さんと昔トレーニングパートナーだったんですね。
谷野義弘の言葉より、
「ボディビルって、肉体だけでなく精神にも重い負荷をかけていくスポーツだと思います。ギリギリまで自分を追い込んでいって、そこから逃げ出さないんじゃなくって、逃げ出せなくしてしまうんです。毎日遅刻をしないで学校に行ってたとしますよね。一回だけ、眠いからといって朝寝坊しても、その記録はストップしてしまうでしょ。一回くらいいいじゃないかと思う人と、その一回がとてもイヤな人の違いなんです。自分は一回でも遅刻したくない。つらくても、怪我してても、ちゃんと学校へ行くんです。」
このセリフ、なかなか出てきません。
第2章 女性ビルダー
2章は高橋明美(旧姓松本)さんと西本朱希さんがメインです。
女性ビルダーにはこれまで正直興味がなかったんですが、そんなことなくなりました。
筋肉を付けることと女性らしさを追求すること、対極にある2つを求められるんです。
全盛期の頃、海岸で日光浴をしていると、小学生低学年らしい女の子が明美の身体を見て大声を上げた。
「お母さん。見て、見て、あの女の人すごいからだをしているよ!」
母親があわてて娘をたしなめる。
「だって、お母さん見てごらんよ。あの人、すごい筋肉なんだよ。かっこいい。あの人女の人すごくかっこいいんだよ」
明美は女の子に微笑みを返した。
「うれしかった。〜中略〜私、あの時、ボディビルをやってよかったと感じたんです」
泣ける。
第3章 禁止薬物
3章はドーピングに手を染めてまで筋肉を大きくしようとする架空の人物が描かれています。
1993年に殺人事件を起こして懲役20年の判決だった、ボディビルダーの岩間勧も登場します。
(懲役20年なのでもう出所したのでしょうか)
ボディビルダーたちは、筋肉を大きくすることに対して満足を知らない。筋肥大への想いが一線を超えてしまうーそれがドーピングだ。
「四十歳の自分を想像したことなんてありませんし、想像する必要もないと思います」
常軌を逸してます。
第4章 生涯をかけて
4章はJBBF会長の玉利齊さんやマスターズボディビルダーの金澤利翼の話です。
金澤利翼さんは現在78歳ですが、いまだ現役のボディビルダーのスーパーお爺ちゃんです。
99歳まで現役を続けることが目標だそうです。
ボディビルについて金澤さんの言葉
「一度でもこの喜びを知ってしまったら、もう逃げられんのと違いますか。ボディビルというのは身体だけのもんじゃない。やればやるほど内面の奥深くに突き刺さって抜けんようになるんです。」
名言!
最後に
この本を読んでボディビルダーの内面を垣間見たような気がします。
やっぱりボディビルダーって凄まじいですね。
自分もトレーニングは大好きですが、とてもここまで出来ません。
あの身体を作るには、多くのものを犠牲にしないといけないのかもしれません。
でも読むとトレーニングしたくなります。しかもガッツリと。
初版は2000年で、2012年に文庫化されています。
筋トレ好きの方は一度読んでみてはいかかでしょうか。