プランクで腹筋は割れない?体脂肪18%からの最短ルートを筋生理学から解説

■はじめに

「30日間プランクチャレンジで腹筋を割る!」「毎日3分のプランクで理想の体型に!」
最近、SNSやYouTubeでこのような情報を目にする機会が増えています。

確かにプランクは効果的な体幹トレーニングの一つですが、これだけで理想的な腹筋を手に入れることは本当に可能なのでしょうか?
今回は、現在体脂肪率18%の方を例に、理想的な腹筋を手に入れるための最短ルートを、筋生理学の観点から詳しく解説していきます。
単なる「やれば効果がある」といった漠然とした情報ではなく、科学的根拠に基づいた具体的な方法論をお伝えしていきます。

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■プランクの効果と限界:筋生理学的な視点から

結論から申し上げると、プランクだけでは理想的な腹筋を手に入れることは困難です。
その理由を詳しく見ていきましょう。

プランクによって主に活性化されるのは、腹横筋、内腹斜筋、外腹斜筋、そして部分的に腹直筋です。
2019年の筋電図(EMG)研究によると、プランク実施時の腹直筋の活動は、最大随意収縮(MVC)の約20-30%程度に留まることが分かっています。
一方、腹横筋や内腹斜筋の活動は40-50%に達します。

筋肥大(筋肉の成長)を効果的に促すためには、最大随意収縮の60-70%以上の負荷、適切な総セット数(週あたり10-20セット)、そして適度な時間下張力(TUT:Time Under Tension)が必要です。
プランクはこれらの条件を十分に満たすことができません。
特に腹直筋に対する負荷が不十分なため、見た目の「割れた腹筋」を作るには適していないのです。

■体脂肪18%からの具体的な目標設定

男性の体脂肪率と腹筋の見え方には密接な関係があります。
体脂肪率が15-18%では腹筋の形がうっすらと確認できる程度ですが、12-15%になると腹筋の上部が見え始めます。
さらに10-12%まで落とすことができれば、いわゆるシックスパックが明確になってきます。
そして8-10%ともなれば、アスリート級のくっきりとした腹筋が現れます。

体脂肪18%から理想的な腹筋が見える12%までを目指す場合、健康的な減量ペースである週0.5-1%の体重減少を基準にすると、3-4ヶ月程度の期間が必要となります。
例えば、体重70kg、体脂肪率18%の場合、除脂肪体重は57.4kg、体脂肪量は12.6kgとなります。
目標体脂肪率12%での理想体重は65.2kgとなり、週あたりの減量目標は0.4-0.5kgに設定するのが適切でしょう。

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■最短ルートのための完全栄養戦略

カロリー管理は、まず基礎代謝量をハリスベネディクト式で算出し、そこに活動係数(1.3-1.5)を掛け合わせます。
そこから500-700kcal程度を削減するのが、健康的な減量の目安となります。

例えば、基礎代謝1,700kcal × 活動係数1.4 = 2,380kcalの場合、目標摂取カロリーは1,880kcal(500kcal削減)に設定します。
タンパク質は体重1kgあたり2.0-2.2gを目安に摂取します。
70kgの場合、140-154g(560-616kcal)が必要となります。
脂質は総カロリーの25-30%、炭水化物は残りのカロリーから算出します。

1日の食事は4回に分けて摂取することをお勧めします。
朝食で総カロリーの25%、昼食で30%、トレーニング前後で20%、夕食で25%を目安に摂取していきます。
食材選びでは、タンパク質源として鶏胸肉、魚、卵白、プロテインを中心に据えます。
脂質はオリーブオイル、アボカド、ナッツ類から、炭水化物は玄米、サツマイモ、オートミールから摂取するのが理想的です。
また、食物繊維の摂取のため、緑葉野菜、ブロッコリー、キャベツなどは積極的に取り入れましょう。

■科学的根拠に基づいた効果的なトレーニングプログラム

全身の筋トレは週3-4回実施します。
プッシュ系、プル系、脚中心の動作をバランスよく取り入れることで、効率的に基礎代謝を向上させることができます。
たとえば、ベンチプレスやショルダープレスなどの上半身の押す動作、デッドリフトやチンニングなどの引く動作、そしてスクワットやレッグプレスといった下半身の運動を組み合わせていきます。

腹筋運動は、まず準備運動としてプランクを30秒3セット、サイドプランクを各20秒2セット行います。その後、メインの腹筋運動として以下のような構成で実施していきます。

クランチでは、上部腹直筋の収縮を意識しながら15-20回を4セット行います。
テンポは2秒かけて上げ、頂点で1秒停止、そして2秒かけて下ろすのが効果的です。

ハンギングレッグレイズは下部腹直筋への刺激を重視し、12-15回を4セット実施します。
こちらは2秒かけて脚を上げ、頂点で1秒停止、3秒かけてゆっくりと下ろすことで、腹直筋への負荷を最大限に高めることができます。
有酸素運動は週3-4回、各20-30分程度を目安に実施します。
強度は、220から年齢を引いた数値の60-70%程度の心拍数を維持できる程度が理想的です。
たとえば30歳の場合、114-133拍/分が目標となります。会話ができる程度の強度を維持しながら継続することが重要です。

■つまずきやすいポイントと解決策

体重は減少しているのに腹筋が見えてこない場合は、部位別の脂肪が残存している可能性があります。
この場合、部位別の体脂肪率を測定し、必要に応じてHIITトレーニングの導入を検討することをお勧めします。
途中で停滞期が訪れた場合は、週に1回のリフィードデー(普段より多めに食事を摂る日)を設定したり、トレーニング強度を見直したりすることで乗り越えることができます。
また、十分な睡眠時間の確保も重要です。最低でも7時間は確保するようにしましょう。
モチベーションを維持するためには、週1回の進捗写真撮影や定期的な体組成の測定が効果的です。
また、トレーニング日記をつけることで、自身の変化を客観的に確認することができます。

■まとめ

プランクは確かに効果的な体幹トレーニングの一つですが、それはあくまでも補助種目として活用するべきです。
理想的な腹筋を手に入れるためには、正確な栄養管理を最優先としながら、全身運動による代謝向上、効果的な腹筋運動の実施、そして適度な有酸素運動を組み合わせた複合的なアプローチが必要不可欠です。

この記事で解説した方法は、すべて科学的根拠に基づいた効果的なアプローチです。
必要な要素を漏れなく、かつ効率的に組み合わせることで、3-4ヶ月での確実な変化を目指すことができます。
なお、過度な減量や無理なトレーニングは健康上のリスクがありますので、体調が悪い場合は必ず休養を取り、必要に応じて専門家に相談することをお忘れなく。
焦らず、着実に、そして何より楽しみながら理想の体づくりを進めていきましょう。