筋線維の構造アクチン・ミオシンから筋収縮のエネルギー源ATPまで。運動生理学講座Vol.2
ハルト

♪たーての糸はあなた〜、よーこの糸はわたし〜

ソウタ

中島みゆきの「糸」だね

ハルト

多分コレは筋肉の歌だね

ソウタ

は?

ハルト

だって筋肉は糸状の線維を束ねた構造だからね

※実際には縦と横に織りなす筋肉はありません。

さて、今回は運動生理学講座第2回目。

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筋肉の内部構造と筋肉のエネルギー源についてです。

筋肉は線維の束!最小単位はアクチンとミオシン

ちょっとグロい話ですが、私達の皮を剥ぐと筋肉がモロに見えます。
その筋肉は下記の画像のような見た目です。

このイラストのように、筋肉は細いヒモ状の線維が束になっています。
筋線維といいます。

前回、速筋と遅筋について書きましたが、速筋線維と遅筋線維という筋線維の種類の違いです。

筋線維の内部のことを筋形質といいます。
筋形質の内部に数百本から数千本の筋原線維というフィラメントがあります。
フィラメントとは、細い糸状のものです。
電球の中とかにもありますね。

余談ですが、発明王エジソンが、日本の竹を白熱電球のフィラメントに使って、実用化に成功させたんだとか。さすがエジソン。

さらに、筋原線維はたくさんのアクチンフィラメントミオシンフィラメントが規則正しく重なり合って出来てきます。
1セットのアクチンとミオシンを筋節(サルコメア)と言います。

アクチンとミオシンはたんぱく質です。
だからたんぱく質をたくさん摂ることが大事です。

ミオシンは枝毛のように、先っぽがちょろっと出ていてこの頭部がアクチンの上をスライドします。

上の画像のように、アクチンとミオシンがお互いに滑り込むようにくっついたり離れたりすることで、筋肉が伸び縮みします。
これを筋収縮と呼びます。

ハルト

筋トレでアクチンとミオシンのサイズを大きく出来るんです!

ソウタ

じゃあ、「俺のアクチンとミオシンでかくなれ!」と思いながら筋トレするよ。

筋収縮のエネルギー源はATP

物質はエネルギー源が無いと動きません。
車で言うと燃料、ガソリンです。

アクチンとミオシンによる筋収縮のエネルギー源はATPです。

ソウタ

ATP?エネルギー源って食べ物じゃないの?

ハルト

食べ物をエネルギー源に変えてくれるのがATPなんだ。
だからATPは「エネルギーの通貨」と呼ばれてるんだ。

ATPはアデノシン三リン酸という化合物で、その名の通り、アデノシンと3つのリン酸がくっついてます。

最初、ミオシンの枝毛の部分にATPがくっついてます。
筋肉を収縮させるときに、3つのリン酸のうちの1つが離れます。
この時にエネルギーが放出されます。
エネルギー=カロリーなので、カロリーが消費されます。
ATPはリン酸が1つ無くなるので、ADP(アデノシン二リン酸)になります。

ATPがADPに分解するのは水に反応する加水分解です。

ハルト

水が足りないと反応が悪くなるので水をこまめにたくさん飲みましょう!

ATPが無くなると体は動かない

ATPが筋収縮のエネルギー源なので、ATPが切れると筋肉は動かなくなります。
言い換えると、筋肉が限界の状態です。

筋肉内に元々あるATPは、2〜3秒の運動だけしか出来ない量です。

ソウタ

2〜3秒だと1レップしか出来なくない?

ハルト

だからATPは常に体内で再合成されているんだ。

この再合成には次の3つの系統があります。

  • ATP-PCr系
  • 解糖系(乳酸系)
  • 有酸素系

供給の速度や時間順に並べると、
ATP-PCr系>解糖系>有酸素系になります。

筋トレで大事なのは酸素を必要としない「無酸素系」と言われるATP-PCr系と解糖系です。

クレアチンが働くATP-PCr系

一番パワーが大きく、速度が速く、時間が短いのがATP-PCr系です。
供給時間は7〜8秒と短時間です。

筋肉内のエネルギー源は、ATPの他にクレアチンリン酸(PCr)があります。
クレアチンとリン酸が分解するときにエネルギーは発生します。

ソウタ

クレアチンってサプリメントで聞いたことあるよ。

ハルト

そう、そのクレアチン。
アスリートやハードに筋トレする人は、サプリメントで摂ってクレアチンを満たしておくんだ。

クレアチンを摂取すると、使用重量が増えるとか、最後のもう一回が上がるようになるとか言われますが、ATP-PCr系が活性化されるからです。

食品だと肉や魚に多く含まれますが、食事から充分な量を食事から摂ろうとするとカロリーオーバーになってしまうので、サプリメントで摂る人が多いです。

1セットやりきった時には解糖系

ATP-PCr系の次は解糖系が働きはじめます。

解糖という通り、糖質を分解してATPを産み出します。
同時に、ピルビン酸や乳酸にもなります。

ソウタ

ハードな運動すると乳酸が溜まるって言うよね。

ハルト

そう、エネルギー源であるATPと同時に乳酸が出て筋肉が苛酷な状態になってしまうんだ。

でもその苛酷な状態が筋肉にとってストレスになり、筋肥大が起きます。

解糖系が働いてくれる時間は約30秒です。

解糖系が終わるまでの時間を振り返ってみると、
元々のATP3秒、ATP-PCr系7〜8秒、解糖系30秒で合計40秒です。

40秒は、筋トレで10回1セットやる時間とほぼ同じです。

つまり、一気に全力を出すような強度の高い運動は40秒が限界ということです。

これが速筋を刺激する、筋肥大を狙った筋トレのカギです。

ハルト

1セットを回数じゃなくて秒数で考えてみても面白いね!

持久力のある有酸素系

ATP-PCr系→解糖系の次は、有酸素系が来ます。

ソウタ

有酸素運動のこと?

ハルト

そう、有酸素運動の名前の由来もこれだね。

有酸素系は文字通り、酸素を取り込みつつ、脂肪を酸化させてATPを産み出します。
運動が長くなれば、体内の脂肪が使われます。

複雑な経路なのでATPの供給速度が遅いです。
一方で持久力が高く、体内に糖質や脂質がある限りずーっとATPを産み出してくれます。

ハルト

有酸素運動は筋トレの後が良いって聞いたこと無い?

ソウタ

もしかして、ATPの関係?

ハルト

そう、先に筋トレして解糖系で糖質を使ってから有酸素運動をやると脂肪が使われやすいからね。

まとめ

今回は耳慣れない用語ばかり出てきました。

以下の要点だけでも覚えてください。

  • 筋肉は細い線維の束で出来ている
  • 最小単位はアクチンとミオシン
  • アクチンとミオシンで筋収縮が起こる
  • 筋収縮のエネルギー源はATP
  • ATPは、ATP-PCr系、解糖系、有酸素系の順に再合成される

──次回予告──

筋肉を司る「神経」について。