
「骨盤底筋」と聞くと、女性の悩みに関係する筋肉というイメージが強いかもしれません。
たしかに、産後の尿もれ対策やインナーマッスルケアで注目されることが多いこの筋肉。
しかし実は、男性にとっても非常に重要な“締める筋肉”であることをご存知でしょうか?
筋トレ初心者や中級者の中には、アウターマッスル(表面の筋肉)ばかりを鍛えて、「目に見える変化」ばかりに目が行きがちです。
でも、目に見えない“インナーマッスル”をおろそかにしていると、トレーニング効率が上がらないどころか、健康や男性機能の低下にまでつながってしまうこともあるのです。
骨盤底筋とは?──男性こそ意識すべき“縁の下の力持ち”
骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)は、骨盤の底をハンモックのように支えているインナーマッスルです。
肛門、尿道、膀胱、前立腺などの臓器を下から支える筋肉で、「排泄・性機能・姿勢・呼吸」など、多くの機能に深く関わっています。
骨盤底筋の主な役割
- 内臓の支持:膀胱・直腸・小腸などを下から支える
- 排泄コントロール:尿・便を“締める”働き(括約筋と連携)
- 腹圧の維持:体幹トレーニングや呼吸とも連動
- 性機能の維持:勃起・射精・快感にも関与
これらの機能が衰えると、さまざまな“中年の悩み”につながります。以下に、骨盤底筋が弱まると起こる典型的な症状をまとめました。
骨盤底筋が弱まると、こんなトラブルが…
- 尿もれ・残尿感・頻尿などの排尿トラブル
- 中高年男性に多い「前立腺肥大」の悪化リスク
- 性機能の低下(勃起不全・射精の弱さ)
- 猫背・反り腰など姿勢の崩れ
- 腹圧が逃げやすくなり、筋トレフォームが安定しない
こうした不調は「年齢のせいだ」と片付けがちですが、実は骨盤底筋の衰えが原因であるケースも多いのです。
裏を返せば、この筋肉を意識的に鍛えることで、QOL(生活の質)を大きく改善できる可能性があるということでもあります。
筋トレ男子が“見落としがち”なインナーマッスル
ベンチプレス、スクワット、懸垂──。筋トレ好きな男性が取り組むメニューは、どれも外側の筋肉にフォーカスした種目が多いのが現実です。
もちろんアウターマッスルを鍛えるのは重要ですが、インナーマッスルの安定があってこそ、最大限のパフォーマンスが発揮されるのです。
骨盤底筋を鍛えることで得られる3つのメリット
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腹圧が安定し、筋トレ効率アップ!
スクワットやデッドリフトでは“体幹の安定性”が求められますが、骨盤底筋が弱いと腹圧がうまくかからず、フォームが崩れたり、腰を痛めたりしやすくなります。
骨盤底筋を鍛えることで、腹横筋や多裂筋など体幹部の筋肉との連携が高まり、本来の筋トレ効果を引き出しやすくなります。 -
姿勢が整い、腰痛や肩こりにも効果的
骨盤底筋は、横隔膜・腹横筋・多裂筋とともに「インナーユニット」と呼ばれる深層筋群の一部。
これらが連動して働くことで、骨盤の傾きや背骨のS字カーブが安定し、腰痛・猫背・反り腰などが改善される可能性があります。 -
性機能や泌尿器の改善に寄与
海外の研究では、骨盤底筋を鍛えることで軽度のED改善や、排尿コントロールの改善が見られたというデータもあります。
筋トレでテストステロンを増やすだけでなく、骨盤底筋を鍛えることで“機能としての男性力”も高められるのです。
骨盤底筋は「締める意識」で鍛えられる
他の筋肉と違い、骨盤底筋はダンベルやマシンを使って直接鍛えることができません。
だからこそ、「意識すること」が非常に大切です。
例えば、おしっこを途中で止めるような動作──これが骨盤底筋の動きの一部です。
この意識をもとに、ドローイングやヒップリフト、ケーゲル体操などのエクササイズを行うことで、誰でも少しずつ鍛えていくことができます。
次章では、筋トレ初心者でも無理なく始められる、男性向けの骨盤底筋トレーニング3選をご紹介します。
寝ながらできる!男性のための骨盤底筋トレーニング3選
ここからは、筋トレ初心者〜中級者の男性でも自宅で簡単にできる「骨盤底筋トレーニング」を紹介します。
特別な道具は不要。日々の習慣に取り入れることで、姿勢改善・筋トレ効率アップ・性機能の維持にもつながります。
① ドローイング(腹式呼吸トレーニング)
骨盤底筋+腹横筋(お腹の深層筋)を鍛える基本エクササイズです。
呼吸をコントロールしながら、お腹を“へこませる”動作がポイント。
- 手順:
- 仰向けに寝て、膝を立ててリラックス
- 鼻から息を吸い、お腹をふくらませる
- 口からゆっくり息を吐きながら、お腹をぺたんこに引き締める
- 吐き切ったら“おしっこを止めるように”骨盤底筋を締める
- この状態を5〜10秒キープ → ゆっくり脱力
- 回数の目安:10回 × 1〜2セット(朝・夜がおすすめ)
② ヒップリフト(お尻持ち上げトレーニング)
骨盤底筋に加え、大臀筋・ハムストリングス・脊柱起立筋などの体幹をバランスよく鍛えるエクササイズです。
姿勢改善や腰痛予防にも効果的です。
- 手順:
- 仰向けに寝て、膝を立てて足を肩幅に開く
- 腕は体の横に置いて、手のひらを床につける
- お尻をゆっくり持ち上げ、肩〜膝が一直線になるようにする
- この時、骨盤底筋をギュッと締める意識を持つ
- 5秒キープ → ゆっくり下ろす
- 回数の目安:15回 × 2セット(腰に違和感がない範囲で)
③ ケーゲル体操(男性版)
欧米では男性の泌尿器ケアとして非常に有名なエクササイズ。
座っていてもできるので、デスクワーク中にもおすすめです。
- 手順:
- 椅子に座って背筋を伸ばす(立っていてもOK)
- おしっこを途中で止めるような感覚で、骨盤底筋を締める
- 5〜10秒キープ → 脱力
- 呼吸は止めずにリラックスして行う
- 回数の目安:10回 × 3セット(1日2〜3回が理想)
効果を高める3つのポイント
- 「締める感覚」を意識せよ
骨盤底筋は意識しにくい筋肉。最初は“おしっこを止める”“肛門を締める”感覚をつかむことが重要です。 - 呼吸を止めない
無理に力むと腹圧が逃げてしまいます。ドローイングなどは呼吸を意識しながら行いましょう。 - 継続が命
骨盤底筋は地道に鍛える必要がある筋肉です。1〜2ヶ月継続してようやく効果が出るケースも多いため、毎日のルーティンに組み込みましょう。
骨盤底筋トレーニングに役立つアイテム紹介
より効果を高めたい方は、以下のような補助アイテムやサポートグッズもおすすめです。
① 骨盤底筋トレーニング専用クッション
座るだけで自然と骨盤底筋に刺激が入る設計のクッション。
デスクワーク中にも使えて、無意識にトレーニングができます。
② 骨盤底筋 トレーニング器具
骨盤底筋や内転筋を鍛えることができる器具です。
③ 呼吸筋トレーナー(インナーマッスル強化に)
腹圧を高める呼吸筋をトレーニングできるツールです。横隔膜・腹横筋・骨盤底筋との連動を意識したい方におすすめ。
まとめ|男の“土台力”は骨盤底筋から始まる
骨盤底筋は、普段意識することのない「見えない筋肉」ですが、男性の健康・姿勢・パフォーマンスに密接に関わる“縁の下の力持ち”です。
とくに40代以降は、テストステロンの低下や筋力の衰えも重なり、骨盤底筋を鍛えることの重要性は増すばかり。
この記事で紹介したトレーニングは、すべて自宅で簡単にできるものばかり。まずは1日1分のドローイングからでも構いません。
「男の締め筋」を意識して、体の内側から変えていきましょう。