人間の筋肉って本当の力の50%〜70%しか出してないんだって。
へー、どうして?
100%の力を出すと、体がぶっ壊れちゃうからね。
そうならないように神経が制御してくれてるんだ。
さて、運動生理学講座Vol.3ということで、今回のテーマは筋肉と神経です。
1回目と2回目は下記になりますので、ご一緒にどうぞ♪
速筋と遅筋について。バックアップしたいなら速筋を刺激しよう!運動生理学講座Vol.1
筋線維の構造アクチン・ミオシンから筋収縮のエネルギー源ATPまで。運動生理学講座Vol.2
神経の話なんておっぱじめたらキリがないので、筋トレ初心者〜中級者が知っておくと役に立ちそうなことに絞っていきます。
明日誰かに話したくなる小ネタもあるかも・・・
筋肉は神経を通した電気信号で動く
神経の基本から行きましょう。
神経とは、情報伝達の役割をしてくれています。
筋トレのように、自分の意思で筋肉を動かすときは脳→神経→筋肉の流れです。
体のLANケーブルみたいなものです。
語源は、「神気」と「経脈」合わせた造語で、杉田玄白が解体新書を翻訳する時に作った言葉なんだって!
中枢神経と末梢神経
神経は、中枢神経と末梢神経の2つに大別されます。
中枢神経は、脳と脊髄です。
「組織の中枢」とかの言葉があるように、根幹になる大事な神経です。
中枢神経については今回は詳しく書きません。
人体には重要ですが、筋トレで意識することはほとんどないからです。
末梢神経は、体性神経と自立神経に分かれて、さらに体性神経は運動神経と知覚神経、自立神経は交感神経と副交感神経に分かれます。
なんとなく聞いたことがあるワードがいろいろ出てきたよ。
筋トレに大きく関わるのは、もちろん運動神経ね。
司令塔である脳から指令が出ると、ニューロンと呼ばれる神経細胞が受け取って他の細胞に伝えます。
伝える時の信号は高速な電気的信号でインパルスと呼びます。
「パルス信号」とか聞いたことがあると思います。
ちなみに、
シックスパッドとか、お腹にくっつける腹筋ベルトはEMSと呼ばれます。
EMSとはElectrical Muscle Stimulationの略です。
腹筋ベルトから発する電気信号で、自分の意思とは関係なく直接筋肉を動かしているんです。
詳しくは下記の記事で書いてます。
初心者ボーナス=筋肉に神経が通る
筋トレには初心者ボーナスがあると言われています。
今なら無料ガチャ○回!みたいな?
・・・まあ、そんなとこだね。
初心者ボーナスとは、新しく筋トレを初めた人が最初の数ヶ月は使える重量がどんどん増えたり、筋肉がつきやすかったりする状態です。
脂肪を落としながら筋肉を増やすことも可能です。
これはある程度の体作りが出来てくると難しくなります。
初心者ボーナスの大きな理由の一つが、筋肉に神経が通ることです。
つまり、筋肉に送る信号がどんどん強くなります。
確かに普段は重いもの持たないし、走ったりしないなー
筋肉側も「使われないな」と思って信号が途絶えてるんだ。
そして筋肉が衰えていく・・・
最初にも書きましたが、神経が通ってないと本来筋肉が持つ力を10%くらいしか使っていません。
これはもったいない。
筋肉の潜在能力をどんどん引き出しましょう。
閾値を超える刺激を与えないと筋肉に届かない
日常生活でも筋肉を使ってますが、マッチョになりません。
なぜかと言うと、筋肉はある一線を超えないと興奮しないからです。
その一線を興奮閾値といいます。
閾値とは、「いきち」または「しきいち」と読み、感覚や反応や興奮を起こさせるのに必要な、最小の強度や刺激などの(物理)量のことです。
0か100かってことだね。
興奮閾値は、筋線維の太さや筋肉細胞のサイズによって違います。
当然、遅筋<速筋になります。
速筋線維が興奮しないと、筋肥大は起こりません。
(詳しくは、運動生理学講座Vol.1を参照)
筋トレは、バーベルを上げることではなく、筋肉に興奮閾値を超える刺激を与える作業と言えます。
筋肉が増えるほど興奮閾値も高くなるので、少しずつ刺激を強くしてあげる必要があります。
漸進性過負荷の原則だね。
運動単位(モーターユニット)を総動員させよ!
大胸筋とか上腕二頭筋とか、筋肉群に含まれる筋線維の数は数十万本あります。
遅筋は10〜180本、速筋は300〜800本が1本の神経でひと括りになっています。
1本の神経が支配するひと括りの筋線維を運動単位(モーターユニット)と呼びます。
ひとつの運動単位の筋線維タイプは全部同じで、遅筋と速筋が混ざった運動単位はありません。
例えば大胸筋を筋トレするときは大胸筋の全筋線維の興奮閾値を超える刺激を与えることが大切です。
筋トレは筋肉を追い込むことが大事と言われますが、つまり運動単位を総動員させるということです。
運動単位を総動員させる筋トレってどうやるの?
フリーウェイトと使うことと、なるべく使う重量を下げないことだね。
フリーウェイトとは、ジムにあるようなマシンではなく、ダンベルやバーベルのことです。
マシンとフリーウェイトにはそれぞれメリット・デメリットがあるのですが、同じ重さでやった場合でも、フリーウェイトの方が多くの運動単位を使えます。
フリーウェイトは安定させるための筋肉も使うからです。
さらに、一つの種目で2セット以上やる場合は使用重量を下げてはいけません。
セット内の回数が少し減ってもです。
重量を下げると動員する運動単位も減ります。
セットを重ねる意味がなくなります。
運動神経がいい人と悪い人
さて、少し余談です。
私の子供の頃は、足が速いとか、器械体操が上手いとか、スポーツが上手いとか、いわゆる「運動神経が良い子」が人気者でした。
サッカー部のエースとかね。
運動神経が良いというのは、言い換えると運動神経がしっかり通っているということです。
例えば、バック転の動きを頭の中でイメージすることは誰でも出来ますが、実際にバック転が出来る人は少ないです。
イメージ通りに体を動かすことが出来る人は、運動神経がしっかり通っている人です。
子供の運動会とかで足がもつれて転んじゃうおじさんがいますが、これも神経伝達が遅くなってしまってるからです。
筋トレの効果においては、運動神経の良し悪しは関係ありません。
運動神経がいい人は、動きのコツを掴むのが上手いので、要領よく筋肉を使わずに動作しようとします。
筋トレは筋肉に効かせないと意味がないので、これは逆効果です。
大胸筋は橈骨神経、広背筋は尺骨神経を使う
筋トレをする時、手でいろんな物を掴んで押したり引いたりします。
グリップと言いますが、掴むときの意識でコツがあります。
- 大胸筋や上腕二頭筋など体の前面の時は親指側で握る
- 広背筋や上腕三頭筋など体の後面の時は小指側で握る
これも神経が関係しています。
腕神経叢の枝で、橈骨(とうこつ)神経と尺骨(しゃっこつ)神経があります。
橈骨神経は親指側、尺骨神経は小指側に繋がっています。
握り方一つで効きが全然違うので覚えておきましょう。
まとめ
筋肉ばかりに目が行きがちですが、神経のことも知っておくと筋トレがレベルアップできます。
筋肉と神経、セットで考えましょう。